オケの中のバイオリンパート

練習ノート

オーケストラのバイオリンパート(弦パート)は席によってそれぞれ役割がある。長くやっている分いろいろな席に座らせてもらった経験があるので、私なりの考えを書いてみる。

まず、プルトの前後に上下関係はない。それぞれに異なる役割があるだけだ。
人より前のプルトに座っている人は後ろのプルトに音楽を伝達しなければならない。1プルトだけでなく最後尾以外のプルトの人は全て自分の背中からも音楽を発していないといけない。最後尾であってもその後ろにコントラバスや管楽器奏者がいるなら同様。
もしこの伝達がどこかで途切れてしまうと、後ろのプルトの人はものすごく神経をすり減らすことになる。5プルトから指揮者や1プルトを観察することはできるし、しなければならないが、その指揮者の音楽と目の前のプルトから感じられる音楽が一致していない場合、判断に困る。指揮者についていくよう後ろからプレッシャーをかけるか、間をとりつつじんわり指揮者に寄せていくか、無理に弾いて余計に混乱しそうな時は一瞬弾きやめて観察することもある。こうなると音楽どころではなくなってしまう。

伝達しなければならないというと、アインザッツを出そうとする人がいるがそうではない。アインザッツはトップ以外の人が下手に出すと余計な混乱を招く。後ろの人が知りたいのはその音にどのくらい熱量があるのか、どんな形のクレッシェンドをしているのか、どのくらいのエネルギーでストリンジェンドしているのか、デクレッシェンドの先にどんな景色をイメージしているのか、どんなフレーズで歌っているのかということ。後ろの人からは前の人の音はとても聞こえにくいが、心の底から音楽を表現しようとしていれば、音が聞こえずともその姿や空気から必ず音楽が伝わる。もちろんこれでタイミングも十分伝わる。
さっきから「伝達」「伝える」と書いてしまっているが、その方向は前から後ろの一方向ではない。4プルトは必ず5プルトの音楽を、3プルトは4,5プルトの音楽を感じていなければならない。新しい情報や方向性はほとんど前から後ろへ伝達されるが、それに応える際には必ず後ろの人の音楽を受け取りながら一緒に奏でなければならない。前のプルトは後ろのプルトに背中を向けて演奏しているが、意識の中では後ろのプルトを視界に入れて、横に並んでその息遣いをお互いに感じながら一緒に語り歌っているような感覚がいいと思う。

バイオリン弾き 三澤

(※これはアマチュア奏者の試行錯誤を記録したものですので、解釈や分析が正しいとは限りません。)

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