今日は人より後ろのプルトに座る場合を考えてみる。
人の背中だけを見て合わせるのは本当に難しい。前の人には後ろが見えないので、どうしても「後ろが前に合わせる」という形になってしまう。「合わせなければ。ズレてはいけない」という気持ちが強くなると、表現はしぼみ呼吸が浅くなる。こうなると前方の音楽の揺れに乗れずに振り回されるばかりになってしまう。ハイスピードで走っている車のお尻に素手でしがみついているようなものだ。すぐに振り落とされる。
やはり人の後ろに座っていても主体的に音楽を作らなければならない。そしてズレがバレにくくなるような曖昧な弾き方ではいけない。音の立ち上がり、アーティキレーション、強弱など、はっきりとした表現をした方がいい。自分なりの楽譜や指揮の解釈を前に伝えていかなければいけないから誇張気味の方が良い。こうすると時に前のプルトや指揮者から解釈が異なるという指摘を受けるのだが、それはどんどん注意してもらって修正すれば良い。そのためにリハーサルがあるのだから。リハーサルの時間に、注意されるのを恐れて音楽を削るのは大きな間違いだ。
言うまでもないが、その前提としては自立して安定した演奏ができるよう、しっかりと個人練習で仕込んでおくことだ。オーケストラの中で弾く際に少し余裕があれば、注意されずとも自分で様々な情報に気がつき、修正することができる。
結局「後ろが前に合わせる」というのは事実かもしれないが、合わせるというより一心同体となることを目指したい。前の人の表情が見えなくても、その背中から発せられている音楽を感じ、勇気を持ってその中に飛び込んでみる。そうすれば、振り落とされる恐怖は消え、一緒にドライブを楽しむことができる。
バイオリン弾き 三澤
(※これはアマチュア奏者の試行錯誤を記録したものですので、解釈や分析が正しいとは限りません。)


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