最近、疾走感あふれる音楽とレトロなMVでバズりにバズっているこの曲。明るい曲調と強いメッセージ性の合わせ技にハマってしまいました。今回はその中でもイチ押しの部分を、オーケストラ団員の目線で解説していきたいと思います。
1 一発で引き込むイントロ
短いモールス信号の後、ピアノで2小節の短い前奏が流れます。

転げ落ちるような変拍子のイントロで、一気に疾走感のある楽曲の世界に誘われます。
2 メロディと歌詞に合わせた声色のバリエーション
けんとさんの場面に応じた声色の使い分けも遺憾なく発揮されています。異様に明るくはつらつとしたAメロ、高らかに歌い上げるCメロ、溜め込んだものを爆発させるような力強いラストサビ前の歌声は、曲に込められたメッセージを強め、その魅力を増幅させています。クラシックの譜面でも、このくらい色々な音色を弾き分けたいものです。
ちなみに、パーカッションやSE(ワッ!!とか)も声で収録されており、引き出しの多さに驚愕です。
3 サビ前に注目させる引き算の音楽
最後のサビ前、1回目のBメロに対して3小節追加されています。

1・2小節目はハモリが段々と追加されていますが、3小節目には突然ボーカル1本になり、最後のサビ前の盛り上がりにつなげています。
私たちが演奏する中でも、クレッシェンドの直前をあえて小さい音量から始めることがよくあります。曲のサビに向けて効果的に盛り上げる仕掛けを、狙って演奏していきたいです。
4 異質で柔らかな終止
それまで急速なテンポで流れてきた曲ですが、曲の終わりの「・・・」は突如として柔らかく終わります。ほんの少しですが救われたような、気持ちが軽くなるような効果をもたらしています。ブラームスの交響曲第2番 第1楽章や、ドヴォルザークの交響曲第9番 第4楽章の終わり(弦楽器のピチカートに木管の響きが残る)に似たような終止で、爽やかな読後感、雨上がり、夜明けなどを想起させます。
他にも書きたいところはたくさんあるのですが、うまく書き表せられないのと、あまりにも個人的な感想になりそうなので、このくらいにしようと思います。音楽のジャンルは違えど、魅力的な曲からは学ぶことばかりでした。私も、演奏を聴いている方々の心に少しでも触れられる、そんな演奏ができるようになりたいものです。まずは次の演奏会に向けて、get it get it doneしようと思ったのでした。


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