チェロと考える 音律のこと

練習ノート

 前回まではチェロの右手のことについて述べてきましたが、がらりとテーマを変えてみたいと思います。アマチュア奏者の恐怖、音程にまつわる話です。

 音程、音階という言葉はよく聞きますが、音律という言葉はあまり聞き馴染みがないかもしれません。音律とはある音のまとまりを導き出すための規則で、この記事では特に長音階を生み出すための音律を3つ紹介します。

ピタゴラス音律

基準の音から5度上(周波数1.5倍)の音を連続して取っていく手法です。ド→ソ→レ→ラ→ミ→シと上に取り、ファはドから下に5度下げて取ります。

全ての5度がぴったり合います。ミ・シが高めで半音が狭いため歌い方が自然で旋律向けな反面、ドとミの和音がとても合いません。


×1.5
×1.5
×1.5
×1.5
×1.5
×1.5
ファ

純正律

基準の音から、周波数の整数比ができるだけ単純になる音を選ぶ手法です。

主要な和音(ⅠⅣⅤ)がぴったり合います。ただ広めの全音と狭めの全音があり、旋律に用いると不自然な印象。

19/85/44/33/25/315/8
ファ

平均律

基準の音からオクターヴ(周波数2倍)を取り、半音の比が等しくなるように12分割する手法です。半音上がると周波数は2の12乗根倍になります。

ぴったり合う音はないですが、どの調に転調してもほどほどに合います。

×2
ドド♯レ♯ファファ♯ソソ♯シ♭ド

 オーケストラでチェロを弾くことを考えると、多くの場面では純正律の立場で音程を取っていくことになりそうです。ただ、旋律ではピタゴラス音律、無調や半音階では平均律の考え方を取り入れてみるのも面白いと思います。なんにせよ、演奏している間は常に調性を意識しておかなければなりません。

 果たしてそんな微妙な調節ができるのか、という疑問も湧いてきますが、この点に関して私はひとつ雑な指針を持つようにしています。「メロディではシャープの音を高く取る」「和音ではシャープの音を低く取る」ことです。これで、3・6・7番目の音を調節できるようになり、場面に適した音程を取ることができます(ということにしています)。

 音程を安定させるためにチューナーとにらめっこして基礎練習をしたり、パートで難しい箇所の音程を一音ずつ合わせたりしていると、暗い夜道で落とした家の鍵を探しているようなやるせない気分になりますが、音程の仕組みが分かっていれば少しは希望を持って音程を探しに行けると思うのです。出したい音程を出すための身体的な鍛錬は怠らずに、音程へのこだわりも楽しんで突き詰めていきたいものです。

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