歌手といえばボイストレーニング。バイオリン弾きの私はボイストレーニングにあたるものをやっているか。音階練習は音程を取る練習になっているし、右手左手のテクニックばかりが気になっている。いざ譜面を弾けば、高音が痛いだの中音域が響かないだの音量の幅がないだの。そりゃそうだ、トレーニングしていないんだもの。
しかし、楽器のボイトレで定番の型と言えるものを私は知らない。音階練習でも意識の持ちようで楽器のボイトレとなり得るんだろうが、できる限り複雑な要素を削いだシンプルなトレーニングがいい。
学生の時「60秒ボーイング」(1音を1弓で60秒かけて弾く)が流行っていた。弓と弦の噛みを隈なく意識してできるだけ波を立てず、底板が振動するように。あれは効果があったと思う。大学から始めたビオラ弾きの友人が毎日続けていたら格段に楽器が鳴るようになっていた。
以前読んだ雑誌には倍音を聴くトレーニングとして、解放弦のGを弾き、その時鳴っている倍音をハーモニクスで実際の音として弾いてみる、というのが紹介されていた。

そして再び解放弦Gだけを弾いてみる。この時倍音が聴き取れるかどうかが問題ではなく、聴き方と聴いている時の身体のあり方が鍵らしい。他を遮断する「集中した」聴き方ではなく、耳を開いて広い範囲に意識を「拡散させる」聴き方。この状態が身体のまとまりにも作用して、その結果倍音を含んだ豊かな音色を生む、と。
楽器のボイトレ、工夫次第で身体の扱いも耳も良くなってあらゆる技術の向上に繋がる夢のトレーニングかもしれない。弦楽器は音を出す事こそ難しくて奥深いのだから、速弾きの練習ばかりしていてる場合じゃない。
バイオリン弾き 三澤


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