こんにちは。バイオリン弾きの三澤です。
現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」、ご覧になっていますか?当時の世界観ながら人物の心情に共感できるとても素敵なドラマです。第8回「招かれざる者」の中で、吉高由里子さん演じるまひろが自分の母を殺した道兼に向けて琵琶を弾くシーンは印象的でしたね。
その音楽はすごくシンプル。3つの分散和音(?)がゆっくり弾かれ、それが自然の水音や風音の中で響くだけ。驚くようなテクニックや美しい旋律はありません。「現代音楽みたい」と一瞬思いましたが、逆ですね。現代が原点に帰っているんでしょう。
実際はもっと長く変化のある音楽なのかわかりません。しかしこの削ぎ落とされた簡素な音楽は、まひろの心境を最も濃く語り、道兼や画面越しの私にも深く届くものでした。平安の人の感性はすごい。それを表現する役者さんや演出家さんもすごい。
話は変わりますが、iPhoneの天気予報アプリをスクロールしていくと、その日の月の情報が出てくるのを今更ながら発見しました。
今の月は「寝待月」。名前の由来は、「月の出の時刻が遅いので、その時間まで寝て待つから」だそう。
月が出るのを待つって?しかも一度寝てから月を見るためにもう一度起きる?
現代人の私は、小さな驚きと昔の人への尊敬の念を持ちました。
琵琶の調べにしろ月の扱いにしろ、本来人間が持っている感性の繊細さに気付かされます。時代と共にもっと面白いもの、もっときれいなもの、もっと新しいものを追求するあまり、私たちはこの繊細な感性を封印してしまっているのでしょう。
ただそこにあるものに心が動く。なんでもない物の裏に込められた気を感じる。
こういう感性は、この混沌とした世界を生きる喜びを味わうために授けられたものかもしれません。どなたが与えて下さったのか存じませんが、最高の贈り物です。
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