ピアノ弾きから見たオーケストラの世界

演奏曲のこと

こんにちは、今回の管弦楽団紬に参加させて頂きます、Pfの者です。
(団員の方のご好意で、僭越ながら今回この記事を作成することとなりました。ありがとうございます!)

↑の写真は、いつも私が見ている練習風景を皆様にも是非共有したく、撮影して頂いたものです。

何の変哲も無い、グランドピアノとオケの風景だが…?と思われるかもしれませんが、ピアノ弾きに取っては色々と感慨深い眺めだと思っています。

オーケストラにピアノが加わる曲というと、ピアノ協奏曲が大半です。
今回の定期演奏会プログラムの一つ、「火の鳥」のように、ピアノが完全にオーケストラのパートの一部として扱われている作品は数としてはそう多くありません。
グランドピアノが大きく口を開けた先に、舞台袖では無く、多くの仲間と指揮者が居る。この風景はそうそうあるものでは無いのです。

また、ピアノ奏者として活動する際にはソロ演奏が基本となります。他の楽器とのアンサンブル演奏の機会というと、何か色々なラッキーが重ならない限りは頻繁にあるものではありません。
練習では1人で自分自身と向き合い、作品と向き合い、繰り返す自問自答の中で解決策を練り出し、(恐怖の)レッスンの時間を迎えます。
本番のステージに立つ前の舞台袖では、ワクワクと不安の壮絶な渦の中で1人で溺れることになります。(そうでない方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも私はそうです。)

楽しみ、早く演奏したい、あー…でも○小節目の左手のパッセージもっと練習しとくんだった…、まあ何とかなるさ!こないだも何とかなったし!帰ったらめんちゃんこ食べ行こ!あぁでもやっぱり怖い、、、、

「出番です、お願いします」

こう声が掛かったら、そういう気持ちを全部まとめて羽織っていたカーディガンと一緒に控席の座席に置いて、背筋を伸ばして一人ステージへ立つのです。

これはこれで、ピアノ奏者をやっている上で何にも変え難い愛しい瞬間の一つではあるのですが、
オーケストラは、そんな気持ちを分かち合える仲間がいる。
周りを見渡せば、一つの作品を仕上げるために苦楽を共にした仲間がいる。
もちろん皆で演奏する分、1フレーズを繰り出す際の重圧などは増す気はしますが、少なくとも孤独感は消え、緊張は一体感に変わるように思います。
そして何より、自分が放った音に、様々な個性を伴った音が重なり、色彩豊かな”音楽”となって客席に届く、こんなに楽しく喜ばしいことはありません。
わりと聴き慣れたピアノの音が、他の楽器の音と混じり合うことによってどのような響きに変わるのか?会場にお越しいただいた方には、是非その辺りも楽しみに「火の鳥」をお聴き頂ければ幸いです。

明日が当たり前に来る訳ではないことを意識させられるようなニュースしか耳にしないような毎日ですが、
そんなニュースで塞いだ耳を少し解放して、長いこと世界中で語り継がれて来た、生きる喜びを湛えた音楽に触れてみませんか。

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