火の鳥とストラヴィンスキーと手塚治虫

曲紹介こぼれ話

ファゴットのTです。

3月10日の第24回定期演奏会まで残り約1ヶ月となりました。

なんと今回の紬は、ついに念願のアクロス福岡での初公演となります。

2009年の設立から15年目にして、ようやく初のアクロス公演が実現する・・

初期から参加しているメンバーの一人として、実に感慨深いものです。

また今回のプログラムでは、後半にストラヴィンスキー作曲のバレエ組曲<火の鳥>(1919年版)をお届けします。今まで古典・ロマン派初期の作品を中心に取り組んできた紬ですが、音響の良い広い会場で、初めての20世紀の音楽に挑戦します。

前半の古典プログラム(ベートーヴェン/「エグモント」序曲、ハイドン/交響曲第100番「軍隊」)とあわせて、新しい紬の魅力をご堪能いただけるのではないかと思います。

是非とも足をお運びください。

ところで、バレエ<火の鳥>のお話ってご存知ですか?

「火の鳥はCDで聴いた事はあるけど、あらすじはよく知らないよー」という方、意外と多いのではないかと思います。

以下、簡単なあらすじです

夜、イワン王子は火の鳥を捕えるため、魔王カスチェイの魔法の庭にやってくる。黄金のリンゴの木の近くに火の鳥がいて、王子は火の鳥を捕えることに成功するが、火の鳥は「魔法の羽」を1枚渡すので、逃がしてほしいと懇願する。王子は納得し、魔法の羽を受け取り、火の鳥を逃す。その後、カスチェイに捕えられた王女たちが庭にあらわれ、王子はひときわ美しい王女(ツァレヴナ)と恋に落ちる。夜明けと共に魔王とその手下達があらわれ、王子を石に変えようとするが、王子が魔法の羽をふりかざすと、火の鳥が再びあらわれる。火の鳥は、不思議な力を使ってカスチェイたちに狂気的な踊りを強要し、眠りにつかせたうえ、魔王の弱点も教える。火の鳥の助けによってイワン王子はカスチェイを打倒することに成功し、石に変えられていた人々も生還する。最後は晴れて王子と王女は結ばれる。

いかがでしょうか?

「王子が神秘的な火の鳥の力をかりて、魔王から王女を救出して結ばれる」という単純明快なファンタジー風の冒険譚となっています。王子は火の鳥に頼りっぱなしという気がしなくもないですが・・目先の欲にとらわれず火の鳥を逃がしてあげたこと、そして何よりも好きになった人を助けたいという気持ちが大事ということでしょうか。

この台本は、ロシア民話「イワン王子と火の鳥と灰色狼」、「ひとりでに鳴るグーズリ」という二つの話を組み合わせて、バレエに適したプロットとなるように大幅に改変して創作されています。

「不思議な力を持つ火の鳥」というモチーフはその他のロシア民話にもよく登場し、ロシア的なバレエ作品の題材とするのに、うってつけのモチーフだったのでしょう。

ちなみに、手塚治虫はこのストラヴィンスキーのバレエ<火の鳥>を観劇し、その火の鳥の妖艶で神秘的な姿に大いに刺激を受け、彼のライフワークとなる漫画<火の鳥>を制作するきっかけになったと言われています。

手塚治虫「火の鳥」

私は、漫画<火の鳥>を全巻読んだことがあるのですが、なるほど、手塚治虫の火の鳥は、バレエ<火の鳥>からイメージを飛躍させ、時間と空間を超越した永遠の命を持つ不死鳥として登場しますが、不思議な力をもちストーリーに重大な影響を及ぼすという点ではかなり共通するイメージがあるなと、納得しました。

今回演奏するでは組曲(1919年版)は、20分程度の演奏時間ですが、物語のハイライトとなる音楽で巧みに構成されています。純粋に音楽的な部分だけでも素晴らしい作品ですが、ストーリーや火の鳥のイメージを想像しながら聴いていただくと、さらに面白く感じられるのではないでしょうか。

それでは、本番をお楽しみに!

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