師の教え

お茶しませんか?

ひとつ前の記事も基礎練習の話。内容がダブりますがご容赦を。

私、九響のヴィオラ主席の平石先生のもとに10年ほどレッスンに通いました。エチュードもむつかしかったけれど、シェフチークのボウイング、フレッシュのスケールは徹底的に叩き込まれました。特にスケールでは3オクターブの長調と短調の音階、各種分散和音、3度の上昇下降、半音階、各種重音などの課題の中で、ポジションの固定観念を壊す、目もくらむようなことをさせられました。当然うまくいかないので落ち込むばかり(こんなの実際の演奏で使うことあるのかしら??)。シェフチークのボウイングでも早いテンポで全弓を使わされたり細かい音符をダウンやアップばかりで弾かされたり、リコシェサルタートやリストスピカート、マルテラートなどありとあらゆるパターンを課されました。全然うまくならないうちに東京に転勤となり、レッスン通いもそこまで。

ところがひょんなことから参加することになったワーグナーの楽劇全曲演奏プロジェクト、ライン川の主題や虹の架け橋、ワルキューレの騎行のアルペジオ、トリスタンの半音階進行、フレッシュの課題でやったことがある!!ワルキューレの嵐のリストスピカートやローエングリンの群衆の期待感のリコシェサルタートやデタシェのスタカート、シェフチークでやったことがある!!ラインの乙女の3度音程進行、ローゲの魔の炎の2重半音階、タンホイザー序曲の駆け上がり、フレッシュでやったことがある!!平石先生のレッスンに行く前だったら、どう弾いたらよいかわからないような音形やボウイングテクニックなどが頻出。まるで10年間のレッスンはワーグナーを弾くためのレッスンだったよう。もっと言えばフレッシュのスケールやシェフチークのボウイングテクニックは、西洋音楽の最高峰たるワーグナーの作品を弾くために作られたかのよう。その後も、短3度ばかりのスケールはブルックナー5番のクライマックスを弾くのに大いに役立ちましたし、アクロバッティックなポジション移動は火の鳥でも効果を発揮しました。

私はいつも演奏会の後は、ゴリゴリ弾いて荒れてしまったボウイングの治療のため、シェフチークを一通りさらい直します。レッスン中、「こんなの使うことないよね!」と思っていたスケールもその実効性を目の当たりにして、今も折を見て時間をかけてさらっています。基礎練習は実演奏の部品庫!、もっと早くレッスンに行き、もっと長く、もっと熱心にやっていたらと残念に思います。

私も齢59となり片耳も聞こえなくなり、弾けるのは10年にも満たないでしょう。最後に弾く日まで、シェフチークとフレッシュを座右において、師の教えを守っていきたいと思っています。

びおら 柴田

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