Vlaの松村です。
15年ほど前の紬立ち上げから関東に引っ越すまでの7年間、紬の代表を務めておりました。それ以降は録音や動画データの編集などで裏方をしておりましたが、先日の第24回定期演奏会(@アクロス福岡)にて久しぶりに中で演奏させていただきました。直前リハから演奏会という短い期間での参加でしたが、本当に楽しめました。誘っていただいた現代表や、リモートで深夜まで練習に付き合ってくれたVlaトップに感謝感謝です。
今回久しぶりに紬に乗ってみて驚いたことは、8年前に比べて人数も倍近くに増え編成も大きくなったにも関わらず、弦楽器の末席に至るまで音楽性が共有されており、また団員の主体性もあって表現の幅が一段と拡がっていたことでした。音楽の機微への感性を養い、それを全体で共有することの難しさはオーケストラや吹奏楽をされたことのある方ならご存知かもしれません。ちょっとしたフレーズの終わり、音の処理ひとつひとつに、私が団を離れてからの活動の軌跡が刻まれているように感じました。
紬を立ち上げるとき、一回限りの思い出作りオーケストラのつもりだった私に対して、井上さんが指揮を引き受ける条件として挙げたのが「最低でも3年間は活動を続けること」でした。「音楽性の共有には最低3年は必要。それができて初めて、古典は楽しめる。」たしかこういう理由だったと思います。実際に、紬の活動を始めて3年程度すると「紬の音楽」のような物がフンワリと出来てきた気がしますし、その頃から「紬の演奏が好き」「紬に乗りたい」と言ってくれる人も増えたような気がします。そんなこんなで活動を続けて15年目、継続は力なりとは言いますが、あの人集めにも苦労するような弱小団体だった紬が、ここまで大きく成長した姿を見ることができたのは、後に引き継いでくれた代表の方々やパートリーダー、団員一人ひとりの努力の賜物だと思いますし、ノリと勢いで立ち上げた団体に最初から真剣に向き合ってくれて、皆が楽しめる場に作り上げてくれた指揮者の井上さんへの感謝は筆舌に尽くしがたいです。
さて、紬立ち上げ時に井上さんと取り決めたルールは実はもう一つあり、それは「毎回モーツァルト作品を取り上げる」という物でした。実際にこれまで、井上さんが紬を振る際はプログラムに必ず一つはモーツァルト作品が入っていましたし、フレーズの歌い方、音の処理など、音楽性の基本を養うのにこれ以上の教材は無く、紬の伝統を築く上で大きな意味があったと思います。しかし今回のアクロス公演ではついにそのルールを外し、アンコールも含めてモーツァルトは取り上げませんでした。これは紬が団体としての伝統を培うフェーズから、伝統を活かすフェーズに移行したことを示しているように感じます。紬の今後の大きな飛躍を、関東の片隅から見守り続けたいと思います。
自称最古参のファン 松村
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